ソウルのレトロカフェ

ソウルには多種多様なコンセプトのレトロ&ニュートロカフェがあります。レトロ風やニュートロ風で飾られた空間も素敵ですが、実際に長い年月を重ねた本物のレトロほど特別なものはありません。 そこで今回は長く営業を続けてきたソウルの老舗カフェを3つ紹介。創業年数は平均60年超え!「カフェ」というより「喫茶店」、「珈琲屋」、「パン屋」と呼ばれてきたお店ばかり。色褪せた佇まいでさえ魅力的に感じられるノスタルジックな空間で、午後の特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
68年間ソウルの流行を見守り続ける喫茶店
1️⃣ 学林 since 1956
大学路(テハンノ)の大通り沿いにある赤レンガの建物の2階。ここに60年以上変わらず営業を続けるカフェ「学林(ハンニム)」があります。たくさんの人たちが行き来した古い木の階段を上ると、耳に入ってくるのは穏やかなクラシック音楽。心地良いアンティークな雰囲気の店内に新しいものはひとつもありません。コーティングの剥がれ落ちたテーブル、古びたソファ、棚いっぱいに並ぶLP盤、木製ピアノなど、家具や小物すべてに長い年月を重ねた味わいがにじみ出ています。
ソウル市民の隠れ家的スポット
今見ても素敵な「学林」は、「別荘(ビョルジャン)」という名前でオープンした当時から人気の喫茶でした。近くにあるソウル大学の学生はもちろん、音楽、美術、演劇、文化など、芸術家たちの憩いの場として使われ、詩人のチョン・サンビョンやキム・ジハ、歌手のキム・グァンソク、俳優のソン・ガンホなど韓国を代表する著名人たちもこの店の常連客だったとか。1980年代には学生運動の聖地的存在として、さまざまな学生運動が計画されました。最近では当時の思い出に浸りたい常連客だけでなく、レトロな魅力にハマった若者たちの姿も見られます。ドラマ『星から来たあなた』のロケ地としても有名。今も昔も多くの若者たちを虜にするこのカフェの魅力とは?
当時の看板メニューを堪能
ここを訪れた人なら一度は味わったことがある学林茶房の人気メニュー「ウインナーコーヒー」と「クリームチーズケーキ」を注文!
☕️ ウインナーコーヒー
時代の趣が感じられる空間にしっくりと馴染むビジュアル!コーヒーの上にたっぷりのった生クリームは、期待を裏切らない甘くて優しい味わい。コーヒーの完成度も高く、生クリームと一緒に口に入れた時のおいしさは感動もの。歴史を感じるレトロな空間がほろ苦いウインナーコーヒーに味わいをプラスしてくれます。いつまでも記憶に残るそんな味です。
🍰 クリームチーズケーキ
チーズケーキとは思えないビジュアルが印象的。チーズケーキとプリンを足して2で割ったようなふわふわ食感のチーズケーキです。甘さ控えめの優しい味のケーキにさっぱりとしたジャムをお好みで添えてもOK!一緒に食べると口の中で絶妙なハーモニーが広がります。
  • 学林
    学林
    飲食店 · ソウル(東大門)
80年代の音楽喫茶がそのまま残る
2️⃣ トバンネ since 1983
黒石洞(フクソクドン)にある路地裏の地下1階。 狭い階段を降りると、外とは別世界の光景が広がります。薄暗い店内ではクラシック音楽が壮大に流れ、赤いライトが灯る空間はまるで古いホテルのロビーのよう。
何ひとつ変わらず当時のまま
音楽喫茶が流行していた1983年にオープンした音楽喫茶「トバンネ 」。40年以上、今も昔も変わらず中央大生の憩いの場として人気です。壁一面にぎっしりと書き込まれた落書きが、歳月の長さを物語っています。長い間、同じ場所で営業を続けてきたことも素晴らしいですが、すべてが40年以上前のままであることに特別さをより感じます。一度もリモデリングを行わずインテリアも創業当時のまま。テーブルについたタバコの跡までそのまま残っています。
サイフォン式コーヒーを楽しむ
テーブルを並べた最近のカフェとは異なり、アーチ型の壁でテーブルを囲んだ個室のような空間が特徴的。これも80年代のカフェで流行したスタイルなんだとか。個室のおかげで、人が多くても秘密基地に来たような静けさと心地良さが感じられ、会話も弾みます。コーヒーはすべて蒸気圧で抽出する「サイフォン式」を採用。これもまた80年代のスタイルそのまま。注文したメニューが出てこなかったので、そっとキッチンを覗くと店主が丁寧にコーヒーを淹れていました。
メニューは全50種類、何を選ぶ?
「ドリップコーヒー専門店」としてオープンした「トバンネ」には、その名にふさわしくコーヒーだけでも数十種類のメニューが揃っています。他のドリンクを含めるとその数なんと50種類以上!メニューには豆の特徴が詳しく書かれているので、ご心配なく。店主に直接おすすめを聞いてもOK。看板メニューのひとつでもあるカフェ・ロワイヤルとパフェを注文!
☕️ カフェ・ロワイヤル
注文の数分後、テーブルの明かりが突然消え、店主がコーヒーに着火したと同時に青い炎が燃え上がります。炎が消えたらコーヒーの完成! 華やかに登場したこのコーヒーこそが「カフェ・ロワイヤル」。ナポレオンが好んで飲んでいたコーヒーなんだとか。炎の正体はスプーンにのせた洋酒で、ほのかにお酒の香りが漂いますが、アルコールの味はほとんどしません。あっきりとした味わいのコーヒーです。
🧋パイナップルパフェ
なんだかちょっと懐かしいパラソル型のピック! わくわくするようなカラフルなビジュアルのパフェは全部で3種類。甘くてさっぱりした味が口の中に広がり、夏の思い出が蘇ります。これひとつで糖分チャージもばっちり!
  • トバンネ
    トバンネ
    飲食店 · ソウル
ソウルで最も古いパン屋
3️⃣ 太極堂 since 1946
地下鉄3号線東大入口(トンデイック)駅5番出口すぐの奨忠体育館の向かい側に位置する太極堂は、4階建ての明るい白色の大きな建物です。 大きな規模と韓方医院を連想させるパワフルな名前が印象的。通り過ぎてもパン屋だとは思えないような外観です。 ですが、このお店は80年近くの伝統を誇るソウルで最も古いパン屋なのです。
ベーカリー&待ち合わせスポット
1945年に植民地支配から解放された後、日本人が経営していた製菓店を買収しオープンさせたのが「太極堂」の始まり。「太極堂」という店名には韓民族の理想が詰まっており、3代に渡って受け継がれたこのお店は、ソウル市民とともに長い歴史を歩んできました。おいしいパンを求めて連日多くの人が訪れ、当時は10店舗もの支店があったそうです。1970~80年代には待ち合わせスポットとしても注目されていたとか。
映画のセットのような古風なインテリア
お店に一歩足を踏み入れると、昔の韓国にタイムスリップしたような気分になれます。4階建ての広い店内やどこか懐かしいインテリア、昔ながらの装飾品(シャンデリア、金魚鉢、石の彫刻など)はどれもこれもレトロそのもの。まるで映画のセットのような空間が広がります。 現在の姿はリモデリングとリブランディングを経たものですが、そのほとんどが当時のまま残されているそうです。昔ながらの素朴なパッケージを見れば一目瞭然。昔の姿を大切に保持するこのお店は常連客にとってもありがたい空間となっています。
いつも変わらない味の看板メニュー
モナカアイスや野菜サラダ、バターケーキなど、 太極堂の看板メニューはどれも昔懐かしいものばかり。創業当時から変わらないというその味を確かめるべく、2つの看板メニューを実食!
🍦 モナカアイスクリーム
香ばしくパリッとしたモナカの中に、甘くまろやかなミルクアイスクリームがたっぷり詰まって相性抜群。モナカアイスクリームは1947年に発売されたお店の看板メニューで、今も昔も一番人気。さっぱりしたアイスクリームのおいしさの秘訣は自社で育てた牛のミルクにあるようです。
🌭 野菜サラダ
新鮮な野菜をパンの間にぎっしり詰めた「野菜サラダ」は1975年に開発されたメニュー。他店のサラダパンよりも、風味豊かでヘルシーな味わい。半分食べただけでお腹いっぱいになるほどボリュームがあるので、食事にもぴったり。
  • 太極堂 本店
    太極堂 本店
    飲食店 · ソウル(東大門)
常連のおじいちゃんたちに混ざってサンファ茶を一杯
4️⃣乙支茶房 since 1985
「流行りの道」という意味を込めて「ヒップ支路」とも呼ばれる乙支路(ウルチロ)で、1985年から約40年に渡り営業を続けている老舗カフェ「乙支茶房(ウルチタバン)」。カフェ激戦区のソウルで、変わらずお店を守り続ける昔ながらの喫茶店です。古いソファやレトロなテーブル席に座って乙支路の街を眺めながら、サンファ茶やナツメ茶、ユルム茶など健康的でおいしい伝統茶が味わえます。
BTSも来店!真のレトロスポット
再開発が盛んに行われている乙支路一帯。以前は近くにある平壌冷麺の老舗「乙支麺屋」と同じ建物にありましたが、この地域の都心再開発により多くの老舗が移転を余儀なくされ、乙支茶房も今の場所に移転しました。BTSがミュージックビデオの撮影で訪れてサンファ茶とナツメ茶を飲んだことでも知られ、店内にはBTSの写真や人気テレビ番組のサインなどが飾られています。
ずっと変わらない手動式の計算機
カウンターに置いてある1から11の数字が書かれた小さなプラスチックケースと赤、緑、黄色などのカラーチップ。実はこれ、店主が考案したオリジナルの計算機なんです!1から11の数字が書かれたケースはテーブル番号、カラーチップは色ごとにサンファ茶、生姜茶、高麗人参茶などを示していて、1番のケースに赤いチップが入っていれば「1番テーブルのお客様がサンファ茶を注文した」という意味になるんだそう。ちなみに会計済みの場合は黒いチップを使うとか。まるでボードゲームのような可愛らしい会計システムです。
喫茶店でラーメンまで味わえる?
乙支茶房の変わり種メニューといえば、なんといっても「モーニングラーメン」! 朝食を食べずに出勤した会社員のために始めたのがきっかけで、自家製のキムチとおいしいラーメンが食べられると話題になりました。ラーメンは午前10時までと周辺の食堂が店を閉める午後3時〜5時の間のみ販売しています。
☕️ ぷかぷかと卵黄が浮かぶサンファ茶
ナツメや松の実、ピーナッツとともに、ぷかぷかとお茶に浮かぶ卵の黄身。初めは飲むのを躊躇ってしまう斬新なビジュアルですが、意外にも卵黄とお茶の味がマッチした甘い味わいの韓方茶なのです。卵黄はタンパク質が豊富で胃を保護する効果もあり、韓国では昔モーニングコーヒーにも卵黄を入れて飲んだそう。体の芯から温まるので、寒い季節の風邪予防にもぴったり。騙されたと思って一度トライしてみてはいかが?
🍅 店主特製のトマトジュース
カフェでは珍しいトマトジュース。あったとしても市販品を出すところがほとんどですが、ここでは店主の手作りトマトジュースが味わえます。幼い頃に友達のお母さんが作ってくれた味に似ていて、甘すぎず健康的でどこか懐かしい味わい。親切な店主がサンファ茶の飲み方や高麗人参茶、生姜茶について丁寧に教えてくれるので、初来店の方でも安心です。
  • 乙支茶房
    乙支茶房
    飲食店 · ソウル
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2024.02
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